グリストラップの設置で守るべき条例はある?グリストラップは義務なのか

飲食店などの事業を始めようと考えている方の中には、グリストラップに関してどのような法律や条例があるのか分からないという方もいるのではないでしょうか。グリストラップに関する法律や条例を理解しておくことで、意図しない法律違反や条例違反を回避することができます。

そこでこの記事では、グリストラップの設置に関する法律や守るべき条例についてご紹介します。間違えた理解をしていないかチェックしていきましょう。

グリストラップの設置は条例で決まっている?

グリストラップの設置が義務かどうかの最終的な判断は、各都道府県の条例に準じます。東京都はグリストラップの設置を義務付けていますが、すべての都道府県が設置を義務付けている訳ではありません。事業を始める前に、登記する予定の都道府県に確認しましょう。

義務化していないからといって無視する経営はよくありません。グリストラップの設置をしていないことが原因で、排水管を詰まらせてしまうと損害賠償を請求されてしまう場合があります。

また、油をそのまま排水として流してしまうのは環境に悪影響を及ぼします。法律や条例で定められていなくても、グリストラップの設置目的を意識して積極的に取り付けるようにしましょう。

グリストラップに関する3つの法律を理解しよう!

グリストラップに関係する法律には「建築基準法施行令」「下水道法」「水質汚濁防止法」があります。これら3つの法律を理解しておくことで「なぜグリストラップの設置が必要なのか」「違反するとどうなってしまうのか」を把握することができます。この項目では、飲食業を経営する上で大切な3つの法律をご紹介します。

建築基準法施行令

建築基準法施行令とは、建物の敷地や構造、設備や用途など最低限の基準が具体的に決められた「政府が定めた政令」です。全部で150条からなり、各項目に細かい決まりごとが記載されています。

建築基準法施行令の第129条にはグリストラップに関する項目が明記されており「排水のための配管設備の設置や構造は国土交通大臣が認めた安全や衛生に問題がないものにしなさい」というものです。では、国土交通大臣が認めたものとは、どのようなものなのでしょうか。

それは現在の国土交通省にあたる建設省が定めた「建設省告示」に明記されています。建設省告示第1597号に「配管に流す油脂やガソリンなどが配管設備を傷つける恐れがある場合は、適切な位置に阻集器を設けること」とあります。つまりは配水管を詰まらせたり汚したりする危険性がある場合は、グリストラップを設置しましょうということです。

下水道法

グリストラップの設置以外に、排水に対して基準を設けている法律が2つあります。それは「下水道法」と「水質汚濁防止法」です。この項目では、下水道法について説明します。

下水道法とは、下水道を整備することで都市や街が安全に発達したり公衆衛生を向上させたりすることを目的に施行された法律です。公共用水域の水質保全を図る目的も含んでいます。

下水道法が対象となるのは「市街地の公共下水道」「流域下水道」「都市下水路」です。それぞれの条件に合わせた設置や管理について規定が設けられています。この規定を守らず排水管を詰まらせるなどすると損害賠償を請求されることもあり、賠償額が100万円単位にのぼることもあるので注意が必要です。

水質汚濁防止法

水質汚濁防止法とは、その名のとおり水を汚したり濁したりしないようにすることを目的に施行された法律です。主に事業所や工場から排出される汚水に対して制限を設けたものであり、人の健康や生活環境の保護を目的としています。

水質汚濁防止法が適用されるのは「特定施設」と呼ばれる事業所です。特定施設とは、カドミウムを始めとする「人の健康を害する恐れのある物質」を排出する施設、化学物質など政令で定める項目のうち「生活環境を害する恐れのある物質」を排出する施設「1日の排水量が50立方メートルを超える」施設が該当します。

水質汚濁防止法に違反した場合、科されるのは6カ月以上の懲役または50万円以下の罰金です。最初は通達などの改善命令が出されますが、立入検査で指摘されると直罰になります。

グリストラップに関しての条例をご紹介!

ここまで「グリストラップの設置」は各都道府県の条例に基づくということや、グリストラップの設置に関わる3つの法律についてご紹介しました。それでは、実際に都道府県の条例ではどのように定められているのでしょうか。ここでは千葉県、千葉県浦安市、神奈川県川崎市で定められた条例をご紹介します。

千葉県

総床面積が100平方メートル以上の飲食店や、201人槽以上の浄化槽を設置する施設に対して、千葉県では規制を設けています。水質汚濁防止法や県が定めている環境保全条例に基づく規制がありますので、該当する施設は地域振興事務所への届け出が必要です。

また、地域によって窒素やリンなど化学物質に対する基準が異なります。印旛沼や手賀沼では10立方メートル/日、それ以外の地域では30立方メートル/日を超える施設は、化学物質の排水基準が厳しく設けられています。

浦安市

浦安市では、市のホームページにグリストラップについての項目を設けています。「グリストラップとは何か」「グリストラップの設置が必要となる事業場の紹介」「下水道管の閉塞事故が発生した場合」など細かくグリストラップについて解説してしますので、浦和市で飲食店を開業する方は市のホームページをチェックしましょう。

また、浦安市ではグリストラップの日常清掃の目安を「バスケットは毎日1回」「ごみや油脂分は 1週間に1回以上」「トラップ内部 は2カ月から3カ月に1回」としています。グリストラップを設置する予定の方は一度目を通しておきましょう。

川崎市

川崎市では市のホームページに「工場や事業場の排水に適用される基準」や「水質汚濁防止法の届け出」についての紹介ページを設けています。届け出については、いつ、どんなときに、どのような届け出が必要になるのかが一覧表となって紹介されています。届け出書類もPDFとWordの2種類でダウンロードすることが可能です。

また「設置に関する届け出」や「使用に関する届け出」「変更に関する届け出」の記入例もPDFで用意されています。

結果的にグリストラップは設置しなければいけない!

「グリストラップを設置しなさい」と明記された法律はなく、最終判断は各都道府県の条例に委ねられています。しかし排水に関する大切な法律がありますので、結果的にはグリストラップは設置しなければなりません。

また、環境の保全や社会的観点からもグリストラップは効率的な機能をもっています。飲食店などの特定施設を開業するにあたっては、トラブル回避のためにもグリストラップを設置するようにしましょう。

グリストラップのごみの取り扱い方について

グリストラップのゴミは一般ゴミとして扱ってはいけません。グリストラップのゴミに関しても、環境保全から法律が定められています。そのため、グリストラップのゴミの取り扱い方についてはしっかりと把握しておかなければなりません。この項目で詳しく解説していきます。

産業廃棄物として扱う

グリストラップのゴミは、バスケットに溜まる生ゴミと油脂分、汚泥の3つです。そのうち汚泥と油脂は一般ゴミとして捨ててはいけません。汚泥と油脂は「産業廃棄物」扱いです。きちんとした手順に沿って処分する必要があります。網ですくって普通のゴミとしてゴミ箱に捨ててしまうと法律違反になってしまいます。

産業廃棄物の処理については「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」というもので厳しく定められています。グリストラップは下水に流せば有害とされるものをろ過して処理するところです。ゆえに蓄積したゴミは有害物質として処理しなければなりません。また、大量の油脂分は発火するおそれがあるためきちんとした処理が求められます。

廃棄物処理法違反の罰則

廃棄物処理法に違反すると科されるのが、懲役刑や罰金刑などの罰則です。廃棄物処理法の違反は行政処分を超えた重大な罰則になります。どのようなケースが該当するのか理解しておきましょう。

産業廃棄物を不法投棄した場合や廃棄物処理を無許可で営業した場合、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金です。その業者に委託した場合にも同じ罰則が科されます。個人に対しては「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」ですが、法人の場合は「3億円以下の罰金」が科されます。

契約書の作成違反や許可の添付漏れに関しては、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金です。また、管理表の記載漏れや交付義務に違反した場合は、6カ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科されます。

グリストラップの取り扱いは専門家にご相談ください!

グリストラップの設置やゴミの処理については、各都道府県の条例や法律によって定められています。どのような場合だと違反になってしまうのか素人では判断が難しいものもあります。「知らなかった」では言い逃れできません。また、罪の意識がなくても抵触してしまえば刑罰が科されてしまいます。

そのため、グリストラップの取り扱いは専門家に相談するのが適切です。専門家であれば法律に抵触しないような取り扱いのアドバイスはもちろんのこと、マニフェストの作成もおこなってくれるので安心です。

まとめ

この記事では、グリストラップの条例について解説しました。グリストラップの設置は各都道府県の条例に委ねられ、条例が制定されていない地域での設置は義務付けられていません。しかし、グリストラップに関係する法律に「建築基準法施行令」「下水道法」「水質汚濁防止法」があり、抵触すると刑罰を科されてしまいます。

アイエスジーでは、法律に抵触する危険性のあるグリストラップの状況に対し、専用の用具や機器を使用して清掃をおこないます。本来の運営に集中しもらうためにも、アイエスジーは清掃から廃棄処分までワンストップでサポートします。