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相続のお話⑤ 相続人を確定するには

相続の権利者を探す

 遺産は相続人である配偶者や子供、あるいは兄妹などで分けます。この相続人が何人で、続柄がどうなっているかで、その配分が決まります。ですから、遺産相続にあたっては、まずこの相続人を確定することが必要です。ふつう相続人は妻と子ですが、子が先に亡くなっていることもあります。その場合、子の子、つまり孫に相続権があります。また、生き別れた子がいれば、当然権利があります。相続人の確定で厄介なのは、このように相続の権利がある人をたどって探さねばならないことです。
 相続人を確定するためには戸籍を取得します。戸籍といっても現在の戸籍1通では足りず、被相続人の出生から死亡まで、途切れなくつながったすべての戸籍(改製原戸籍・除籍)と相続人全員の現在の戸籍が必要になります。


「無宿人」とは戸籍がない人


イラストレーション:おがわまさひろ
http://i.fileweb.jp/ogawamasahiro

 戸籍の制度のはじまりは、律令時代(7世紀後半~10世紀頃)にさかのぼりますが、江戸時代の「改帳:あらためちょう(宗門人別改帳)」から徹底されてきました。キリシタン摘発のために信仰宗教を調べることを目的とした民衆調査のことです。労働や戦につかせるためにそれまで使われていた「人別(にんべつ)改め」と一体化し、戸籍原簿や租税台帳の側面ももつようになりました。いわば支配のための名簿です。
 改帳には、家族単位で氏名、年齢、檀徒(檀家)として属する寺院名などが記載されていました。婚姻や仕事などで土地を離れる際には寺院に証明書を書いてもらい、移転先で新たな改帳へ記載することとなっていました。この証明書をもたずに移動した者は「無宿人(むしゅくにん)」となり、農民よりも下の身分とされました。時代劇「木枯らし紋次郎」などに登場する渡世人(とせいにん)は、公的には「無宿人」でした。
 一方、支配者である武士も、その立場・身分によって幕府や藩、上役に戸籍を届けていました。しかしそれは、民衆が受けた調査に比べれば緩いものでした。「家の存続」を第一とする武家社会では、そのための手段が許されたからです。例えば、跡取りがなければ家は断絶するので、子が急死したときはこっそり親戚の子とすり変えることもありました。その場合、戸籍が厳格に残っていると不都合です。武家の戸籍である「由緒書(ゆいしょがき)」の多くには、偽りの年齢や続柄が書かれていました。




戸籍は日本独特のモノ

 戸籍は「戸」という家族制度を前提としています。かつては東アジアの広い地域で存在していましたが、現在は日本と中国だけの制度です。中国でも事実上形骸化していますので、「日本だけの制度」と言えます。お隣の韓国でも2008年に戸籍の制度は廃止されていますし、欧米では昔から国が家族登録を行うことはありません。


戸籍の歴史

 人別帳のしくみを土台に、明治になって戸籍法が成立します。最初に整備された戸籍は「壬申戸籍(じんしんこせき)」といい、明治4年(1871年)の戸籍法に基づいて、翌明治5年(1872年)に編製されました。「壬申」とは、1872年の干支のこと。皇族から平民までを戸を単位に集計したもので、この戸籍により、当時の日本の総人口は、3,311万人と集計されました。
 現在の戸籍法は1948年(昭和23年)の改正で、それまでの「家」を基本としたものから「夫婦」を基本としたものに変わりました。もともと徴税や徴兵のために整備された戸籍ですが、現在、税や行政サービスなどは住民基本台帳などをもとに行われており、戸籍は相続においてのみ重要視されているとも言えます。


戸籍の取り寄せ

 相続人の確定は戸籍を取り寄せることで証明します。
 戸籍には、「どこの戸籍から、いつこの戸籍に入ってきたのか」が書いてあります。それをもとに、ひとつ前の戸籍(従前戸籍)を取得します。その戸籍にも従前戸籍の記載があれば、その従前戸籍を取得し、最後には出生の戸籍までたどり着くわけです。法定相続人の人数や構成により必要な戸籍の数は変わり、100通を超える戸籍が必要になるケースさえあります。


戸籍の種類

 戸籍の書類には戸籍謄本と戸籍抄本があります。相続調査には、戸籍に記載されているすべての人が分かる謄本を使います。抄本は原本の一部を抜き出したもので、多くは個人の確認に使います。戸籍事務をコンピューター化している自治体では、謄本を「全部事項証明」、抄本を「個別事項証明」と呼びます。



(執筆・諏訪書房相続研究会)

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