飲食店にはグリストラップの設置義務がある?法令や設置方法は?

飲食店の開店に合わせてグリストラップを導入しようと考えているが、設置するルールを知らずに悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

設置のルールは、法律や地域の条例が関わってきます。事業所を登記する地域の行政の担当者と繋がることも大切です。ルールや義務を知らないと罰金や懲役などの罰則を課せられてしまうリスクもあります。

そこでこの記事では、飲食店でのグリストラップ設置のルールについてご紹介します。安心して飲食店を開業できるよう、グリストラップ設置の義務や導入しないリスクについて把握しましょう。

飲食店にはグリストラップの設置義務があるのか

飲食店には、グリストラップの設置義務が明確にあるわけではありません。法律を確認してみても、明確に義務化しているものはなくグレーゾーンともいえます。

ただし、飲食店の排水基準については「下水道法」や「水質汚濁防止法」といった法律で定めてあります。設置を明確に義務付けているわけではないが、法律を通じて設置を呼び掛けています。排水基準を満たすために、事実上は義務のような扱いにしているため社会的な視点から導入を考えることも大切です。

そもそもグリストラップとはどういうもの?

グリストラップとは、飲食店の厨房からの排水をそのまま下水に流さないように「油分と水分を分離する働き」をするものです。排水をそのまま下水に流すと環境汚染につながるため、油脂分やゴミをグリストップ内に留めておきます。そうすることで、排水基準値に違反することなく健全に排水処理をする働きをしています。

グリストラップの設置に関わる法令

グリストラップに関連する法令は主に「建築基準法」「下水道法」「水質汚濁防止法」3つです。どれも設置を義務付けた法令ではなく、排水環境に関することになります。違反を犯さないためにも、グリストラップに関する企業のコンプライアンスの曖昧さがないか見直してみましょう。

建築基準法

建築基準法施行令第129条では、建物に設ける排水のための配管設備について「国土交通大臣が定めた構造方法を用いる」と記載があります。

飲食店において覚えておく必要がある法令は「建設省告示第1597号」です。建設省告示第1597号では「汚水が油脂、ガソリン、土砂その他排水のための配管設備の機能を著しく妨げ、又は排水のための配管設備を損傷するおそれがある物を含む場合においては、有効な位置に阻集器を設ける」と定められています。

具体的な数値による記載はありませんが、油を使用する店舗での設置が促されている法令です。配管設備を破損させるリスクがゼロでない限り、建築基準法が適応されます。

下水道法

下水道法では、飲食店から出る排水の水質基準が具体的に記載しています。基準を設けていないと水質汚濁のリスクが生じるからです。

水質基準については、水素イオン濃度、BOD(生物化学的酸素要求量)、ノルマルヘキサン抽出物質(動植物油脂含有量)といった項目で基準を設けています。水素イオン濃度が5~9pH、BOD(生物化学的酸素要求量)1リットルあたり600mg未満、ノルマルヘキサン抽出物質(動植物油脂含有量)1リットルあたり30mg未満が基準です。

この基準を超えないようにするために、グリストラップがあります。下水排出基準を満たしていない水を排出してしまうと、水質改善もしくは排水停止の指導を受けます。それでも改善が見られない場合は、罰則がありますので注意しましょう。

水質汚濁防止法

水質汚濁防止法は、法律が適用される店舗の規模が決まっているためグリストラップが必要かどうか参考になります。水質汚濁防止法で定められている、グリストラップが必要な飲食店の規模は床面積420㎡以上です。

法律で記載している基準に該当しない飲食店であれば、必要ないのかというと違います。水質汚濁防止法に該当していない場合でも、地方自治体で定めている基準に反する可能性があるので注意が必要です。

安易に自己判断せず、行政の担当者と連絡を取って相談することも大切です。汚泥処理のコンプライアンスの曖昧さを指摘してもらうことで、法律違反を犯す前に改善することができるでしょう。

グリストラップの法令における問題点

グリストラップの法令における問題点は、設置に関する明確な義務化がされていないことです。そのため、飲食店経営者の感覚に依存してしまいます。建築基準法を見てみても、グリストラップが必要になる条件が明確に書いていないため曖昧です。そのため、ずさんな排水管理で環境汚染に繋がることもあります。

グリストラップの法律には曖昧な部分が多々あるため、飲食店経営者自身が社会的、倫理的に判断して設置の必要性を考える必要があります。

設置は地域の条例に合わせるのがポイント

飲食店のグリストラップ設置に関して、心配な方は地域の条例に合わせましょう。建築基準法や下水道法、水質汚濁防止法の法令をもとに各都道府県その地域に合わせて条例を制定しています。

例えば東京都では、多くの飲食店の管理を容易にするため「すべての飲食店で設置が義務化」されています。この条例を制定している以上、予算の問題や主観的な判断にかかわらずグリストラップを導入しないと条例違反になります。

このように、それぞれの地域において、具体的に設置に関する条例を制定していることがあるため、不明点がある方は条例を確認し、行政の担当者と連絡を取って相談しましょう。

グリストラップを設置しないことによるリスク

「グリストラップは法律上、設置する義務がない」ということで、設置しないことを考える人もいるかもしれません。しかし、設置しないことによるリスクもあります。

リスクとして考えられるものは、排水管や下水管の詰まりによる損害賠償です。それぞれについて、詳しく解説していきます。設置しないリスクを把握して、設置しなくても問題ないのか確認してみましょう。

排水詰まりの頻発

グリストラップを設置していないと、排水詰まりが頻繁に起きる危険があります。中には、長年の間グリストラップを使用せずに店舗を運営してきて、特に問題が生じたことがない人もいるかもしれません。

しかし、目に見える問題というのは状態が悪くなったときに生じるものです。排水が詰まる状態になってから対処しても、どうにもならなかったり多大な費用がかかったりします。営業を続けていくことが厳しくなるほどの損失が出ることあります。

下水管の詰まりによる損害賠償

下水管が詰まると、近隣の住民の方々にも迷惑がかかります。そのため、グリストラップを設置せずに下水管を詰まらせてしまうと、損害賠償を請求されることもあります。

下水管で何か問題が生じたときは、自分のところの清掃費用がかかるだけではなく、近隣の清掃や工事費用も支払う事態になりかねません。近隣が商業施設であれば、被害数は膨大です。たくさんの人がいるところでは消毒する範囲も広くなるでしょう。

排水管や下水管の詰まりは、店舗運営に大きな影響を与えるリスクがあるためグリストラップを設置しないことで起きる危険性と責任も把握しておきましょう。

グリストラップの清掃基準

各自治体ではグリストラップの設置基準だけではなく、清掃基準も設けていることがあります。清掃に関して、頻度や清掃方法が細かく指定している場合がありますので確認しておきましょう。

例えば、バスケットは1日に1回、油脂は1週間に1回清掃するという基準を設けているところもあります。これらを守らないと指導の対象となり、改善されないと罰則もしくは営業停止になるため注意が必要です。

グリストラップの清掃は、このような自治体の基準を遵守して行う必要があるということを覚えておきましょう。

飲食店のグリストラップを清掃するポイント

グリストラップを導入している飲食店では、定期的に清掃を行うことが大切です。清掃を怠ると、悪臭や害虫の発生により店内の衛生環境が悪化してしまいます。

清掃方法を知らず、気が付かない間にグリストラップにゴミが溜まっていることもあるかもしれません。以下で、飲食店のグリストラップ清掃のポイントを解説します。それぞれのポイントをもとに、定期的な清掃を行いましょう。

バスケットの清掃を行う

バスケットの清掃は毎日行います。残飯や野菜クズといった生ゴミが溜まる部分なので、放置すると排水が詰まりやすくなります。グリストラップの中でもゴミが溜まりやすいところであるため、バスケットが一杯になる前に処理しなければなりません。

バスケット内に溜まったゴミを処理することは簡単です。バスケットを取り出して、中に溜まったゴミを燃えるゴミと一緒に処理します。

毎日清掃することが大変だと感じる方は、負担を減らすためのアイテムを活用してみてもよいでしょう。グリストラップ専用のネットをバスケットに被せてからゴミが溜まるようにすれば、簡単にゴミを処理できます。水切れがよく、細かいゴミまでキャッチできるお役立ちアイテムです。

表面の油脂を取り除く

グリストラップの第二槽目では表面に油脂が浮いてきます。表面に浮いている油脂は2〜3日に1回の頻度で清掃するとよいでしょう。油脂を除去する際は、柄杓やストレーナーを使用することをおすすめします。しかし、このような器具を用いても面倒に感じる人もいるかもしれません。

油脂の清掃におすすめのアイテムとして、グリストラップ用の吸着マットという商品もあります。吸着マットは、水面に浮かべておくだけで油脂を吸着してくれるアイテムです。グリースクリーンの素材が油脂を吸着するものになっているため、特に力やコツは必要なく、水面に浮かべておくだけで処理できます。

グリストラップの清掃は手間がかかる作業であるため、このように効率的に作業を進められるアイテムを使用することがポイントです。スタッフの負担も軽減できるおすすめのアイテムなので、気になる方は検討してみましょう。

底の沈殿物を取り除く

2〜3日に1回は、グリストラップの底に溜まった沈殿物を取り除くことが必要です。底の部分は、一見ゴミがあるように見えないこともあります。そのため、清掃をしないまま放置する方もいますが、どんどん蓄積していきグリストラップ本来の機能が失われてしまいます。

底に沈んでいる汚泥を除去することは大変な作業です。軽いゴミではないため、すくい上げるときに腰に負担がかかります。自分たちの力ですくい上げようとしてケガをしてしまってはいけません。

底に溜まった汚泥を除去するためには、柄の長いすくうアイテムを使用してみるとよいでしょう。角に溜まった汚泥も取りやすい設計になっているので、腰への負担も減らせます。約2メートルの柄があるため、腰に負担をかけずに楽な姿勢で清掃できることが魅力的なポイントです。

トラップ内部を洗浄する

2~3ヵ月に1回は、トラップ内部を洗浄しましょう。第一槽、第二槽でろ過した排水が、第三槽目にあるトラップ管に流れ込みます。そこに流れ込む時点で、排水はある程度キレイになっていますが、清掃しないと油汚れが溜まります。

蓋が付いている場合は、蓋を取り外して清掃しましょう。柄の長いブラシを使うと簡単にできます。

特殊な使い方をしていない限り頻繁に清掃する必要ありませんが、清掃をしない期間が長くなると汚れで詰まる原因になります。清掃頻度に注意しましょう。

消臭する

グリストラップの清掃後は消臭も行うことがポイントです。グリストラップの蓋をあけると、空間に悪臭が発生します。窓を開けて換気をすることも効果的ですが、それだけでは足りないこともあります。お客様の席まで臭いが流れてしまっては経営上危険です。

清掃の際は消臭剤も使用するようにしましょう。専用の消臭剤を使うと、臭いのもとから悪臭を予防できます。消臭剤の香りは、混じって不快になる場合もあるため無香料で無香料がおすすめです。

グリストラップの清掃を行うときは、清掃するためのアイテムだけを用意しがちですが、悪臭対応として消臭剤も用意するようにしましょう。

まとめ

この記事では、飲食店でのグリストラップ設置ルールについてご紹介してきました。「グリストラップを設置する義務」という明確なものは法律で定めていません。ただし、その地域の条例で義務化しているケースもあるため、設置に関しては自治体の条例を確認しておくことが大切です。

グリストラップ設置後は、定期的な清掃が必要になります。しかし、店舗での清掃だけでは汚れが取りきれなかったり、スタッフの負担になったりすることが心配です。店舗での清掃でなかなか汚れが落ちない場合はアイエスジーがサポートします。プロの作業でグリストラップをキレイに清掃し、スタッフの負担を軽減するお手伝いができます。